中小事業主・一人親方 特別加入
当社は製造業を営んでおります。先日、専務が現場作業中の事故により負傷し、入院しました。役員なので労災保険は適用されませんが、病院に健康保険での治療を申し出たところ、「業務上の負傷には健康保険はつかえない」と言われました。こういった場合は全額自己負担するしかないのでしょうか。
ご質問の内容の通り、業務中の事故による負傷には健康保険は使えません。
健康保険法第1条には「労働者の業務外の事由による疾病、負傷、もしくは死亡、又は出産及びその被扶養者の疾病、負傷、死亡又は出産に関して給付を行う」と規定されています。したがって、業務上災害の治療は原則として健康保険を使うことはできません。
業務上災害の負傷には通常、労災保険が適用されますが労災保険の給付を受けられるのは「労働者である」ということが前提条件になります。今回のケースでは災害にあったのが役員であるため、労災保険の給付も受けられません。
現状、御社が任意で民間の保険に加入していない場合には、今回の治療費は全額自己負担になってしまうと考えられます。
役員、家族従者を含めた経営者サイドの業務上災害による負傷、疾病に対する公的な補償は現時点の法律では抜け落ちている状態です。
ただし、労災保険には特別加入という制度があります。これは本来、労災保険の適用範囲外である中小企業の役員や家族従事者に対しても、一定の要件を満たした場合には労災保険が適用される制度です。(二次健康診断等給付は除く)
中小企業では社長や役員の方であっても、現場に出て業務に従事することが頻繁にあります。そういった実情を考慮すると事業主の業務中の災害に対する何らかの対策を施しておくことをお勧めします。