労災
当社では4月から入社する新卒社員に対して、入社前研修を行っています。仮にこの研修中に事故が発生した場合には労災の適用はあるのでしょうか。
労災の適用があるかないかについては、入社前研修がどのような趣旨の下に行われるのかによります。特に参加が義務付けられていない職場見学や職場体験、あるいは単なる一般マナー研修等であれば労災の適用はありません。
研修中に労災適用が認められるには、労働基準法における「労働者」であることが求められます。つまり、研修への参加が強制(参加の義務があり遅刻早退には制裁が課せられる等)であり、研修内容についても入社後の業務遂行に必要不可欠な技能や知識を修得するためのものであること、またこの研修への参加時間を労働時間とし、労働の対価として一般の労働者並みの賃金(少なくも最低賃金以上)が支払われることが要件となります。
研修を実施する企業としては、事故のリスクを考慮してどの程度の研修を実施すべきか予め決定する必要があるかと思います。研修中の事故を完全に回避するのであれば、研修自体を行わないかあるいは座学等の一般研修にとどめるべきであり、強制参加を前提としたより実地業務に近い研修を行わせるのであれば、事前にアルバイト雇用契約を締結しその期間の給与を支払い、指揮命令関係を明確にした上で労災保険の適用をクリアにする必要があります。場合によっては、上積補償として民間の保険に加入するなどの対応があっても良いかも知れません。
また、研修施設などの企業内施設における安全管理については、事業主に安全配慮義務が課せられています。労災保険の適用の有無に関わらず、事故への過失が認められれば損害賠償を求められるケースもあります。
いずれにしましても万が一の場合に備えての安全管理はもちろんのこと、内定者に研修の趣旨をしっかりと伝え理解を得ること、そして実際に事故が発生した場合の社内対応やフォローについて事前に確認しておくことが重要になります。