労災
在宅勤務をしている社員が、自宅で会社に提出する資料をパソコンにて作成中に、手元に置いてあった湯飲みを倒してしまい軽いやけどを負いました。この場合労災補償の対象になるのでしょうか?
業務災害として認められるには、使用者の指揮命令を受けて業務を遂行している最中にその業務に関連して起こった災害による負傷が対象となります。この要件は在宅勤務であっても通常の会社勤務であっても変わりありません。
ご相談頂いたケースですと、会社に提出する資料を作成している最中ということですから当然業務遂行中という要件は満たしております。また、例えばパソコンのマウスをクリックした弾みで手元に置いてあった湯飲みが倒れたのであれば、業務との関連性は認められるかと思います。具体的な認定に当たっては、他の災害と同様に個々の事案ごとに業務に起因して発生したものかどうかについて調査が行われ判断されることになりますが、業務の遂行場所が在宅勤務者の起居寝食など私的生活を営む自宅であることが、労災認定をより難しくしている一因となっています。
つまり在宅勤務については、使用者の直接の管理下を離れて業務に従事することになりますから、個々の行為については使用者の拘束を受けず在宅勤務者の任意に委ねられています。そのために業務時間中にさまざまな私的行為が行われるでしょうし、在宅勤務の性質からして、通常あり得ることと考えられます。災害が起こった際の現認者がいないと言うのも大きな要因かと思います。
前提として通常危険を伴う業務を在宅勤務の対象から外すことはもちろんですが、仮にパソコンを用いた軽易な内容であったとしても業務を遂行する場所と時間を私的な範囲から明確に区別させることが重要となります。例えば特定の部屋でのみ業務を行わせて業務開始時刻及び終業時刻をきっちりと会社に報告させることです。同時に業務の進捗状況なども随時把握しておくことが重要となります。就業場所が私的行為が混在する自宅であるからこそ、また直接使用者の目が行き届かない状況であるからこそ、在宅勤務者との間で事前のルールの確認とその遵守が強く求められます。